研究概要 |
1.鉄鋼生産技術移転データベースの作成によって得られた知見は以下の通りである。 (1)製鉄プラント輸出に伴う日本での技術研修には,エンジニア,テクニカルだけではなくオペレータも参加している事例が多い。オペレータには製造技術に対応する技能が形成されるとみられる。 (2)鉄鋼業における技術研修においては,例えば午前は理論を中心とした座学,午後は製鉄所での現場実習といったように,座学と実地=実機訓練が組み合わせる形で行なわれるのが典型である。 2.文献サーベイ及びヒアリング調査によって得られた知見は以下の通りである。 (1)技術研修・操業指導は,欧米にはトレーニングサービス企業が存在することが示すように,欧米によるプラント輸出でも重視されているおり,それが重視されていること自体は日本的特徴とは言えない。 (2)プラントないし生産設備を輸出する際,日本から現地へ派遣され据付・操業指導を行うエンジニアは外国において評価が高い。ただし,その生産設備が自社製・自国製でない場合,欧米と比して競争力を持っていない。 (3)プラント輸出に関わる操業指導は、鉄鋼業において特に重要な位置を占める。したがって,操業後において技術移転・技能形成の形態をOJTとして把握するよりも,OffJT(座学)を含む操業指導プログラムとして把握することが適切である。 (4)技術研修において重要な位置を占める実機訓練はしばしば現場で行なわれるが、学校(研修施設)でも可能なものもある。学校でも可能なものとは、設備の独立性が高く(つまり前後の工程との結合度が低く)、かつ小規模なもので,組立加工系の技能に多く見られる。しかし,装置産業(鉄鋼業)はすでに自動生産方式の段階にあるためシステム依存性が高いので現場で行なわざるをえない。
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