研究概要 |
本研究ではプロトンNMR法を用いてヒト骨格筋内における脂肪分布について検討し,体組成と体力との関係について調べた.被験者には一般健常男性8名(年令;19.5±0.5才,身長;173±4.8cm,体重;73±15.4kg,体脂肪率22.9±6.8%,最大酸素摂取量44.2±6ml/min/kg)を用いた.実験ではプロトンNMRを用いて非侵襲的に前頸骨筋(TA)の細胞外脂肪(EMCL)と細胞内脂肪(IMCL)のスペクトルを同定し,水信号を標準とする内部標準法にて筋組織内の脂質濃度を求めた.測定は頸骨外側顆から遠位30%,40%,50%の各部表層と深層部の計6ケ所の部位で,1cm^3のボクセル内の脂質濃度について測定した.体脂肪率は水中体重法を用いて身体密度を測定した後に%FATを求めた.最大酸素摂取量はトレッドミルを用いた運動負荷試験を行い呼吸代謝装置によってpeakVO_2を求めた. 【結果】筋内各部のIMCL間およびEMCL間の濃度には有意な差が認められなかった.TA表層部のIMCL濃度は1.8±1.1(mean±SD mmol/kg wet wt)で,EMCL濃度は5.3±4.6であった.TA深層部のIMCL濃度は2.1±1.1で,EMCL濃度は6.3±4.9であった.EMCLと%FATの間には正の相関関係が認められた(p<0.05).EMCLとpeakVO_2の間には負の相関関係が認められた(p<0.05).EMCLは筋線維間(いわゆる霜降り肉)の細胞外脂肪濃度について示しているが,それは体脂肪率とよく一致する.EMCLとpeakVO_2の間においても負の関係が明らかになり,健康関連体力は筋内脂肪の程度に影響することが明らかになった.
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