本研究では、有酸素性運動による減量プログラムを行った場合の適応現象に関して、運動によるプラスとマイナスの影響の差が、実際のトレーニング効果(変化)として現れるという考えの基に構築した数学的モデルを用い、トレーニングによるプラスの影響とマイナスの影響が残存する時間(時定数)を算出し、体力向上と減量効果に表われる個人差を、運動の影響が残存する時間特性から評価することを目的とする。本年度は、体重減少が健康保持・増進の観点から求められる肥満傾向者を対象に有酸素件トレーニングを行い、トレーニングにより生じる適応現象の時間特性を前述のモデルから評価した。またトレーニング中の食事による摂取エネルギー量の変化とモデルから求めた各種指標の関係も検討した。その結果、モデルから求められた運動によるプラスの影響の時定数は、トレーニング開始時の被検者の体格指数との間に有意な正の相関関係が確認され、運動によるマイナスの影響の時定数は、トレーニング開始時の被検者の日常の歩行量の間に有意な負の相関関係が認められた。これらの結果から、有酸素性運動による減量プログラムにおける運動が生体に及ぼすプラスおよびマイナスの影響は、トレーニング開始時の形態的特性や日常の活動量に影響を受ける可能性が示唆された。来年度は、減量プログラム中の食事制限の程度や、運動によるマイナスの影響に代表される疲労と関連が示唆される運動時間の延長が、モデルにより評価されたトレーニングによる適応現象の時間特性に及ぼす影響を検討し、トレーニングによる生体へのプラスの効果が最大になるような減量プログラムの方法論を検証する。
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