昨年度行った肥満傾向者を対象とした減量プログラムに関する各種データから、有酸素性運動による減量プログラムにおける運動が生体に及ぼすプラスおよびマイナスの影響は、トレーニング開始時の形態的特性や日常の活動量に影響を受ける可能性が示唆された。 そこで本年度は、運動によるマイナスの影響が長く残存することが予想される長時間の有酸素性運動によるトレーニングを行い、運動時間の延長がモデルにより評価された適応現象の時間特性に及ぼす影響を検討し、トレーニングによる生体へのプラスの効果が最大になるような減量プログラムの方法論を検証した。対象は、長時間の有酸素性トレーニングが継続可能な若年者とし、各個人の推定最高心拍数の80%に相当する負荷での自転車こぎを100分間、週3回行う。またもうひとつの運動群として、同一強度の自転車こぎを60分間、週5回行う群と、全くトレーニングを行わない対象群の計3群を設ける。トレーニング期間は1ヶ月とし、毎回のトレーニング前に漸増負荷運動テストを行い、推定最高心拍数の75%に相当する仕事率を求め、全身持久力の指標とする。また毎回のトレーニング中の心拍数も記録する。得られたトレーニング中の心拍数に運動時間を乗じたものを前述のモデルの入力とし、全身持久力の変化を出力としてモデルにあてはめ、運動によるプラスおよびマイナスの影響が残存する時間特性を数学的モデルにより評価した。その結果、トレーニングによるマイナスの影響の時定数が、運動時間が長く頻度の少ない群において有意に小さい値を示したことから、トレーニングによる適応現象を抑制する機構は運動時間よりも運動頻度あるいは運動を行うタイミングに依存している可能性が示唆された。
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