短距離走中のエネルギー代謝の理解を深め、効率よい走り方とは何かとを探るために、短距離(100m)走に関してスピード、ピッチおよびストライド長や動作分析といったバイオメカニクス的見地からの視点と疾走中の脚骨格筋の酸素化レベルや血液量などの生理学的見地からの2つのアプローチを試みた。 本年度は、1歩1歩のスピード、ピッチおよびストライド長と酸素動態との関連性について、データ収集を行い、検討を加え、短距離(100m)走に関するメカニズムを生理・バイオメカニクスの観点から検討した。 陸上部に所属する男子学生を用いた。100m全力疾走を行わせた際のピッチの変化と脚筋の筋内酸素化レベルや血液量の測定とに少なからず関連性が見られることを確認した。100m平均タイムは、12.64秒であった。ピッチは、100m疾走開始後、約2.20秒で最高値に達し、最高ピッチの95%以上を維持した平均時間は5.20秒であり、最高ピッチの平均値は、4.72歩/秒であった。 脚筋の対象部位は右腿の外側広筋とし、HEO-200(オムロン社製)を用い、筋内酸素動態を装置最小時間分解能である0.5秒で測定した。メモリーカードに記録されたデータの解析を行ったところ、疾走開始して数秒の間、血液量は減少するものの酸素化Hbの増加がみられたが、その後、すぐに脱酸素化Hbの増加がみられた。この増加の度合いがピッチの値や変化と関係性がみられ、ピッチは筋のポンプ作用としての生理的変化を間接的に示す指標となることが示唆された。
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