研究概要 |
やり投げ競技において,ヤリはたわみ,リリース後も振動しながら飛行することが知られている。これまでに,ヤリの弾性体としての側面に注目し,振動特性を明らかにしてきた。その結果,人間が行う投げ動作を分析する際にも,ヤリは弾性体として扱う必要があるとの結論に達した。しかし,弾性体と見なすことは,投げ動作の力学的解析をさらに難しくすることになる。それは,力学的解析のためにはヤリの入力情報が不可欠で,その精密な測定が難しいからである。これらを解決するには,力を測定するセンサを独自に開発する以外にない。本研究では,投てきの際にヤリに加わる加速度を測定するシステムを開発した。 本年度は,開発した加速度センサを用いて,多くの競技者の力量情報を収集し,やり投げを力学的に解析することを目的とした。 本研究によって得られた成果を以下にまとめる。 (1)それぞれの選手の加速度波形は特徴的であるが,熟練した選手では,個人内でほぼ同じ波形であった。 (2)ヤリのリリース直前でより高い加速度を獲得している選手でも,ヤリの投てき距離が大きくなる傾向は認められなかった。 (3)ヤリに加わる加速度を時間積分し,ヤリの投射初速度を求めたが,被験者による明確な相違は認められなかった。 本測定システムを用いて,さらに多くのデータを収集しやり投げの投げ技術(ヤリに加わる力)を体系化できるようにしたい。
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