本研究では、ラット翻転腸管を用いたin-vitroの腸管潅流装置を使用し、近年、靭帯や腱などの再生あるいは栄養補給という意味からも注目されてきている比較的分子量の小さなコラーゲンなどの蛋白体が、どの程度その機能を残したまま腸管壁を通過するか否かの検討を行うこととした。 本研究では、通常食で飼育した9週齢のwistar系雄性ラットを用いた。まず、初めに、コラーゲンの紫外部吸光の波長曲線を調べた。その結果、278nmに特異的な紫外部吸光度を有していることが確認され、その検量曲線を検討した結果、ある程度の範囲内で有意に正の相関関係が認められ、この吸光度曲線による定量が可能であることが確認された。次に、この潅流装置に翻転したラットの腸管を連結し、その粘膜側にコラーゲンおよび同じく278nmに紫外部吸光を持つトリプトファンとを添加した結果、いずれの場合にも漿膜側の吸光度曲線に増加が見られ、明らかにこの両者が腸管粘膜を通過していたことが示された。さらに、分子量の証明としてコラーゲンおよびコラーゲンが通過したと考えられる漿膜側液の両者について電気泳動を行った。その結果、使用したコラーゲンに含まれる物質と同じ分子量の蛋白体が確認されたが、明確な結論は得られなかった。そこで、コラーゲンおよびコラーゲンが通過したと考えられる漿膜側液のアミノ酸構成について検討した。その結果、漿膜側液中のアミノ酸構成率が、粘膜側に投与したコラーゲンに含まれるアミノ酸構成と酷似した構成であることが明らかとなった。したがって、本実験の成績としては、少なくもコラーゲンの一部がそのアミノ酸構成を維持したまま腸管壁を通過していたものと考えられた。
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