近年、生体内の至る所に存在する蛋白質としてのコラーゲンが注目されてきている。このコラーゲンはアミノ酸スコアからみた栄養価は低いものの、細胞外マトリックスとして最も重要な細胞外繊維成分を構成し、とりわけ、靱帯や腱などに多く存在するため、特にスポーツ選手では障害予防の面からも今後注目されてくるところであろう。そこで本実験では、強制運動を行わせたラットを用い、コラーゲンがその構造を維持したまま腸管壁を通過するか否かの実験を試みた。 本実験では、11週齢のラット(wistar)14匹をControl群(n=7)とTraining群(n=7、1日に15分間、分速20-35mのトレッドミルランニングを週に5日間で4週間行なった)の2群に分け、コラーゲンの腸管壁通過現象の検討を行なった。本実験の結果、まず、ラットの体重はTraining群で12および12.5週齢を除きControl群と比較して有意に低値を示していた(13.5週齢;P<0.01、その他;P<0.05)。次に、Training群の心臓、腎臓および脾臓重量はControl群と比較して有意に増加し、脂肪重量については有意に低下していた(それぞれP<0.05、P<0.05、P<0.01、P<0.05)。一方、腸管壁通過現象を測定するために行った、ラット翻転腸管を接続した潅流装置による紫外部吸光度の変化およびアミノ酸分析の結果は、両群ともにある程度のコラーゲンは腸管壁を通過していたが、その量については両群間に有意な差が認められなかった。したがって、コラーゲンの吸収に関して、強制運動による影響は少ないものと示唆された。また、Training群における体重増加の抑制は、消化吸収による影響ではなく、強制運動による食欲不振などからくる摂餌量低下による可能性が強いと思われた。
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