本研究では、遅筋線維と速筋線維におけるクロスブリッジの動きの違い、およびミオシンとアクチンの相互作用による生じる滑り力発生機構の違いを明らかにすることを目的とする。Wistar系雄性ラットの遅筋のひらめ筋および速筋の長趾伸筋から、スキンドファイバーを調整し実験に用いる。本研究は2年計画で実施され、本年は1年目に当たる。本年度の検討項目は、(1)張力-Ca^<2+>濃度関係と張力-筋線維の硬さ(スティッフネス)関係、(2)結合クロスブリッジの量をスティッフネスで評価し、張力およびCa^<2+>濃度との関係から考察する、(3)張力発生やスティッフネスに対するトロポニンC(TnC)の影響についてCa^<2+>制御蛋白質であるTnCを抽出し、速筋線維と遅筋線維のTnCを入れ替え実験を行い(トロポニン各成分再構成)、TnCの影響を検討する、(4)硬直状態のクロスブリッジの力学的特性について、高分子化合物を用いて筋線維をCompressすることで、縦方向のクロスブリッジの力学的特性を測定する、(5)ミオシンクロスブリッジの可動範囲をin vitro motility assay系により明らかにする。スチッフネスと張力の関係から、遅筋と速筋では張力発生機構に差異が存在すると考えられた。張力発生やスチッフネスに対してトロポニンC(TnC)がいかなる影響を与えているかについてTnC入れ替え実験を現在行っている。また、in vitro motility assay系のため、ミオシンおよびF-アクチンを現在精製中である。本研究を次年度も継続して行うことで、遅筋線維と速筋線維におけるクロスブリッジの張力発生機構の差異とその由来が明らかになると考えている。
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