研究概要 |
ラットを対象として,自発的運動習慣によるkupffer細胞由来のTNF-αおよびNO産生能の変化を明らかにし,そしてin vivo, in vitroの系を用いて,これらの2因子の変化が抗腫瘍効果を生む可能性について検討することを目的とするものであり,本年度までの研究成果についてその概要を報告する. Fischer344系雌を使用し,回転ケージを用いたランニングを負荷した.自発運動終了後,肝免疫染色によるkupffer細胞数の評価,分離kupffer細胞を用いたLPS刺激に対する接着能,ラッテクスビーズの貪喰能,TNF-α,NOおよび活性酸素産生能,TNF-α,ICAM-1mRNA発現,また培養上清を用いた,HeLa細胞,Colo205細胞およびラット腹水肝癌細胞株AH70B細胞に対する細胞傷害性について評価した. その結果,自発運動はkupffer細胞数,分離kupffer細胞の接着能に影響しなかったが,貪喰能は亢進した.活性酸素産生能に差はなかったが,TNF-α,およびNO産生能は自発運動群において,有意に高い値であった.TNF-α遺伝子発現も同様に自発運動群が高い発現であった.kupffer細胞培養上清を用いたHeLa細胞,Colo205細胞,AH70B細胞に対する細胞傷害性には有意な影響は現在までのところ観察されていない. 自発的運動習慣によるkupffer細胞由来のTNF-αおよびNO産生能の亢進は明らかとなったが,これらの2因子の変化が抗腫瘍効果を生む可能性については,少なくともTNF-αを含めた液性による関与は少ないものと思われた.NOは細胞間接着によって抗腫瘍効果を発揮することから,今後供培養の系および,in vivoでの検討を行なっていく必要があり,現在実施中である.
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