研究初年度にあたる平成12年度は、比較研究のためのフレームづくりとして、研究代表者がデータを持つエチオピアの熱帯湿潤林および焼畑社会を対象とする分析に焦点をあてることとした。具体的手順として、次の手順にしたがって研究を実施した。 1.ミクロな森林環境・居住環境の動態の追跡のために、伝統的移動集落と定住化集落からそれぞれサンプルを選定し、空中写真、衛星データ、現地の土地利用・植生調査資料を併用して、今世紀初頭から現在までの集落と森林環境の動態を復原することを試みた。 2.復原によって得られた集落および森林環境の動態に、聞き取りや参与観察によって得られた資料を重ねあわせて、伝統的移動集落と定住化集落の相違点・相同点を比較検討した。 なお、1に関しては、研究代表者が過去に植生調査と土地の履歴調査をおこなった集落(エチオピア・ガンベラ州内のKumi村およびJaaman村)を対象として選定、分析作業をおこなった。 また、2については、過去の現地調査時に収集された、集落移動史の聞き取り、土地利用調査、およびエチオピア中央政府や州政府・郡役所からの統計資料をデータとして用いた。 これらの分析作業の結果、現地の人びとの森林利用の変化と定住化との関係、およびそれに伴う森林環境そのものの変化のプロセスに関するいくつかの知見が得られた。これらは、次年度におこなう比較研究とあわせて、雑誌論文の形で発表する予定である。なお、予察的な研究発表は、すでに本年度内に国際地理学会や国内の研究会でおこない、その際の情報交換によって研究手法に関する改良点も発見された。 以上の作業から、次年度の研究の主眼となる広域(他地域を含む)の比較研究のための準拠枠が得られ、本年度の目的は十分に達成されたと思われる。
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