研究概要 |
本研究は平成12から13年度にかけて実施するもので,本年度はその前半として文献・現地調査などによる情報収集に力点をおいた。筆者はこれまで,環境運動と「地域」の関わりに焦点をあててきた。本研究では,これまでの事例研究を総括するとともに新たな調査により,環境運動を「地域」の文脈から理解する枠組みを示すことを目的とする。 本年度は,まず,(1)環境運動の地理学的研究に関する動向をまとめるために,環境社会学など地理学以外の分野に視野を広げ,文献を集め,地理学との関わりなどについて検討した。環境運動に関する地理学的研究は少ないため,地理学の枠にこだわらない検討の必要を再確認した。次に,(2)2つの事例とした中海・宍道湖と霞ヶ浦のうち,中海・宍道湖では,2000年8月に日本政府による公共事業見直しの対象として中海干拓事業(本庄工区)が代表的中止案件となり,四半世紀もめ続けてきた事業に一つの区切りがついた。そこで1999年末に筆者が発表した論文以降の状況を把握するため,現地での資料収集に努めた。また,2000年5月には地理科学学会春期学術大会におけるシンポジウム「流域環境のとらえ方と地理学の果たすべき役割」においてパネラーとして報告した(地域環境問題における[地元」と「流域」)。さらに,(3)霞ヶ浦周辺地域の環境運動に関し,13年度調査に向けた準備段階的現地調査を行った。筆者は1980年代の活動を調べたことがあるので,10数年ぶりだったが,10数年間にかつてみられた住民運動の行政に対する対抗的姿勢が薄れ,協調的な姿勢が強くなったと感じられた。住民運動の存在が大きなものになった証左とも考えられるが,この点を今後さらに検討していきたい。
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