研究概要 |
本年度は,外国資本による日本企業への経営参画が,自動車産業・自動車工業地域に与える影響について,広島地区を事例に明らかにすることを目的とした研究を実施し,以下の結果を得た。 1.外資による再建が進められているマツダと日産自動車について,経営面での変化や合理化策の内容についての資料を収集し,比較検討を行った。その結果,前者では後者に較べて緩やかに合理化が進められてきたが,2000年から2001年初頭にかけて,生産ラインの休止決定や人員の削減,海外生産の増強など抜本的な改革が実施され,これらが自動車工業地域の性格を変えうる要因であることを確認した。 2.統計資料により広島を中心とした自動車工業地域の動向分析を行った。バブル経済崩壊以降のマツダの生産台数減に対応して,自動車関連工業の事業所数・従業者数・出荷額等も減少傾向にあることが示された。 3.マツダで使用する主要部品200種の取引先を3時点に亘ってみることにより,地元資本の1次サプライヤーの位置づけを行った。同社の重要部品の取引は関東や東海から進出してきた工場に負っていること,地元企業とは輸送コストのかかる重量物や容積が大きい部品を取引していることが明らかになった。この構造は1980年代から現在に至るまで続いており,近年では外国の部品企業との取引が始まっていることも示された。一方,地元部品企業の中でマツダ以外の自動車メーカーと取引関係を有するものはごく少数であり,同社への依存度が高い点が特徴であった。 4.マツダ(株)の調達方式が変化する中で,1次サプライやーの合併や合理化が実施されており,調査によって数社の状況を詳細に明らかにし得た。 次年度は,さらに1次サプライヤーレベルの調査を続けるとともに2次サプライヤーの動向や労働市場の変化に分析を広げ,自動車工業地域再編成の実状をより立体的に明らかにする。
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