研究概要 |
1.文献および刊本史料の検討 (1)焼畑に関わる諸研究の文献調査を進め、全国的な視野からの議論がほとんど行われていないことを確認した。その結果を踏まえ、論文「近世の焼畑と検地について」の前半において検地条目と焼畑の関係を検討した。近世の焼畑に関わる諸研究を批判的に概観する展望論文の作成については、未調査地域の研究状況の把握を終了させてから行う予定としたい。 (2)地方書に叙述された焼畑と山村像の位置づけを検討した結果、幕府と一部の藩の地方役人が「農山漁村」に繋がる農本主義的な村落類型観を抱いていたことが明らかとなった(論文「地方書にみる近世の村落類型観」)。また、焼畑農法を指す概念が近世中期以降に明確化する傾向が確認できた(「近世の焼畑と検地について」の後半)。 (3)農政書・農書・経済思想における焼畑の処遇と位置づけの検討を進めたが、当初予想していたよりも焼畑に関する言及が少ないため、十分満足できる知見が得られていない。ただし一部の知見は「近世の焼畑と検地について」に反映させた。 (4)焼畑名称の地域差と動向の整理については、一部は論文「近世の焼畑と検地について」で議論することができたが、その名称の地域的差異に関する検討は(1)の作業とともに継続する。 2.13年度の調査の準備作業 紀伊山地の検地関係史料の調査を行う準備として,対象集落の地籍図・地形図・空中写真の検討ならびに調査日程の調整を進めている途上である。
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