研究概要 |
1.第40次南極地域観測で掘削した,現成のペンギンルッカリーおよび放棄されたペンギンルッカリーから採取した羽毛,骨,卵の殻,グアノ(糞)などの遺物を整理し,国立極地研究所所有の生物資料・文献と比較対照して,それぞれの遺物がアデリーペンギンに由来するものであることを推定した。 2.放棄されたペンギンルッカリーの測量結果から平面図および断面図を作成し,掘削した地点それぞれの高度を明らかにした結果,放棄されたルッカリーは幅300mの中に大きく13に分かれており,もっとも高いもので標高34.3m,もっとも低い地点で6.3mであった。 3.遺物のうち特にグアノを取り上げて,それぞれの掘削孔の最上部および最下部のものを新規購入した放射性炭素ガス生成装置を用いて前処理を施し,来年度の年代測定の準備を行った。 4.一部の試料は比較のために今年度アメリカのローレンスリバモア国立研究所において放射性炭素年代測定を行った。その結果,もつとも古い年代は5320±60年BP,もっとも新しい年代は1890±40年で,特に基底のグアノの年代に注目すると,約5300年〜2000年BPに集中しており,高度が低いものほど年代が新しくなる傾向が見られた。 5.ルッカリーの存在は,その場所が当時の海水準よりも高い位置にあったことを示すことから,5300年前の海水準は15m以下,2700年前には5.9m以下であったといえる。これらの点と現在の海面の高さ(貯留効果を1300年として)を結ぶと,貝化石の年代と地形の関係から得られたリュツォ・ホルム湾,スカルブスネス・きざはし浜の高精度の海水準変化よりも2〜4m程度高いが,形態はよく似ており,氷床荷重の除去に対するアイソスタティックな陸地の反応は,リュツォ・ホルム湾周辺でもリーセル・ラルセン山地域でもほぼ同様であったと推定された。
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