研究概要 |
衣服着用の目的は,本来寒さや外部からの障害に対して身を護ることであったが,現在のライフスタイルの多様化により,文化や個性表現の身近な道具として様々な商品が望まれている.これら装飾としての機能は勿論のことであるが,着心地や快適性を無視することは無意味であり,衣服の総合的な評価方法の確立が問題となってくる.拘束性の高いファウンデーションガーメントの快適性評価手法として従来は,圧力センサを用いた衣服圧測定による接触式計測手法が一般的である.しかし,センサを直接人体に挿入するため被験者の心理的・生理的疲労が大きい,データの正確性など多くの問題が残っている.そこで,本研究では非接触計測による被服圧分布の推定方法についての基礎的研究を行った. 非接触形状測定装置としてミノルタ製VIVIDを用いたが,従来3次元形状を測定するのが目的であるため運動前後の測定点の追跡が困難である.そこで,形状と同時に測定されるカラー画像と形状データを一致させることにより,ガードルの変形による点の移動を評価することにした.次に,得られた3次元データを2次元平面に投影し,姿勢によるガードル表面の歪みを2次元平面で評価する.このベクトル場に弾性体理論を用いて主歪みを求めることにより,ガードルの動的な歪み分布を評価している.その結果,姿勢変化に伴う歪み分布は衣服圧測定の変化と相関が認められ,歪みを評価することによりガードルの快適性の評価が可能であることが確認できた. 次に,得られた歪み分布から被服圧を予測する方法を検討した.本研究での歪み分布の推定には弾性体理論を用いているので,応力-歪み行列によって応力の理論値は計算することはできる.しかし,これでは布の力学特性や人体の曲率の影響を考慮できず,実用的ではない.そこで,応力と歪みの間に任意の線形方程式を仮定し,布の引張り試験から得られるs-s曲線から定数項を推定し,この力学特性を考慮した方程式に,応力の理論値を代入することにより実用的な被服圧を推定する方法を試み,良好な結果を得ることができた.今後は,人体の曲率や衣服の滑りの問題等に対応することが課題である.
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