平成12年度は、以下の諸点を中心に研究を進め、それぞれ一定の成果が得られた。 1)家政学分野における見解の整理 家政学関連、特に家政学原論や家政学史・家政哲学に関する文献にあたり、家政学者がこれまで「いのち/生命倫理」をどう捉えてきたのか検索したが、該当する記述は現在のところ発見できていない。「生命」は、「生命の再生産」に関わる記述としては見られるが、他の語義に関連した表現としては用いられていなかった。学会誌も同様である。 2)他分野における見解の整理 生命倫理学会の『生命倫理』は、法律関係・医療関係・社会科学関係からのアプローチが多数をしめていた。日本死の臨床研究会の『死の臨床』は、医療関係からのアプローチが中心であった。いずれも、家政学的視点で「いのち/生命倫理」について検証したものは見受けられなかった。その他の分野に関しては、継続して調査中である。 3)ホームページに投稿された意見の分析 NHK-BSが作成・管理しているインターネット・ホームページ『地球法廷』の、"脳死"に関する投稿意見をデータベース化して分析した。賛成派・条件付き賛成派・反対派のそれぞれに意見が分かれて論議されていた。一般論としての意見と、「自分」や「家族」に当てはめての意見とが表裏一体となって現れたほか、現代に生きる我々が求めようとしている死生観が、大きく揺らいでいる様子がうかがえた。 以上の結果に加え、現在も収集した文献のデータベース化を継続して実施している。これらの結果をふまえて、来年度は家政学者に対する意識調査を実施する予定である。
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