近年、大気汚染は社会的に大きな問題となっており、特に生活と密接に関係のある室内空気質は注目されている。なかでも、開放型暖房器具、タバコ、調理器具等から発生する二酸化窒素は、繊維製品おいて黄変、変色などの損傷劣化の引き起こすことが危惧される。本研究は、環境中のNO_2濃度と布帛への付着との関係を明らかにすることを目的としている。 布帛への付着量を検討するために、5種類(毛・絹・綿・ナイロン・ポリエステル)の布90cm^2(5cm×18cm)を用い、プラスチックボックス内に綿糸で一列に並べ2〜8日暴露した。これらの布帛はJISL0803準拠のものである。回収後、試験布を入れた三角フラスコに純水15mlを注入し、振とう機に1時間かけて抽出した。抽出液をイオンクロマトグラフを用いて分析し、付着したNO_2^-およびNO_3^-の質量を求めた。 その結果、布帛へのNO_2^-およびNO_3^-付着に関しては、NO_2濃度および暴露時間の積(ppb×h)に対して直線関係を示すことが認められた。このことから、濃度が高く、暴露が長時間なほどより付着量が多くなることが結論される。また、布の種類によって付着量が異なることがわかった。各布帛へのNO_2^-およびNO_3^-付着量を、モル基準で換算し検討したところ、羊毛布では、NO_2^-の量がNO_3^-より多く付着することがわかった。その比率は、約91%であった。また、ナイロンおよび絹でも同様の傾向があった。しかし、綿およびポリエステルではNO_3^-の比率がこれらの場合より高くなる傾向が認められた。繊維の化学構造により、NO_2ガスの影響が異なることがうかがわれた。
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