食塩添加食品を電子レンジで加熱すると、中心部が温まらない、外側が焦げるなど、特徴的な温度上昇を起こすことが経験的に知られている。そこで、電子レンジ加熱における食塩添加の影響について明らかにすることを目的とし、本年度は溶液モデル試料を用いて、総吸収エネルギーの観点から検討した。その結果、以下のような知見が得られた。 1.水及び食塩水試料をビーカーに入れて単独で電子レンジ加熱すると、沸点以下における食塩水の温度上昇速度は水より小さく、水分蒸発量は多かった。加熱後の試料を赤外線熱画像装置で観察したところ、食塩水試料内部で温度ムラが生じ、蒸発面の温度が内部温度よりも極端に高くなったためであることが分かった。 2.食塩水試料全体に吸収されるエネルギー量は、同体積の水とほとんど差が無かった。すなわち、食塩水試料が電子レンジから受け取るエネルギー量は水と変わらないが、エネルギーの配分の違いによって1.の諸現象が生じていることが明らかになった。 3.1.及び2.の現象は、50mlから1000mlのいずれの体積においても、食塩濃度1%から5%のいずれの溶液試料においても観察され、食塩添加食品の電子レンジ加熱における特徴を示すものであった。 4.500ml以下の体積において、水あるいは食塩水試料を二つ以上の容器に入れ同時に電子レンジで加熱すると、両体積の合計を一つの容器で加熱した場合よりも、総吸収エネルギーは大きくなった。容器の形状より検討した結果、試料の総吸収エネルギーは、マイクロ波を受ける表面積に依存すると考えられた。
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