研究概要 |
近年、食用植物の持つ様々な生理的機能性が注目されており、それらを食品素材とした加工食品や発酵食品に生体の代謝調節、老化予防、発ガン抑制などの効果があることが明らかにされている。発酵食品にも特有の生理的機能が認められており、みそ、テンペ、ヨーグルトなどが抗変異原性を有するなどの報告がなされている。そこで今回、発酵食品の副産物である酒粕の新しい用途を開発する目的で、酒粕抽出物の抗変異原性について検討を行った。抗変異原性については、ヘテロサイクリックアミンの中から、変異原性物質であるIQ(2-amino-3-metylimidazo(4,5-f)quinoline)を用いて、Salmonella typhimurium TA1535/psK1002に組み込んだ、突然変異に関与するumuC遺伝子の発現を指標としたumu法によって検討を行った。まず、酒粕から水およびメタノール抽出画分の変異原性について調べたところ、対照の水およびメタノールと同程度のumuC遺伝子誘導率(SOS反応抑制率)しか示さず、酒粕自体に変異原性はないことが確認された。次に酒粕の水およびメタノール抽出画分とIQを共存させ、umuC遺伝子の誘導率について検討した結果、50%程度強い抑制効果が見られた。また、各抽出画分の濃度の増加にしたがい、抑制率は増加した。水溶性画分中の抑制物質について限外ろ過による分画を行い分析した結果、分子量は3000以下であることが明らかになった。この物質は、ニンヒドリン反応やモーリッシュ反応に陽性であり、ペプチドまたは糖である可能性が示唆された。
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