研究概要 |
肝硬変患者は代謝障害のために一晩の絶食で、飢餓状態の代謝パターンを示す事が知られている。そこで、我々は空腹時間を短くする食事摂取法、すなわち「夜食」の効果について検討したので報告する。対象は肝硬変を伴わない患者15名を対照群とし朝、昼、夕の3回食を施行した。そして、肝硬変患者10名に、従来の朝、昼、夕の3回食での検討後、総摂取量を変えないで約160kcalのパンかおにぎりの夜食(蛋白質:3.5g、脂肪:1.3g、炭水化物:32.8g)を含む4回食、平均10.7±6.5日間行った。肝硬変群の測定前日の1日のエネルギー量は肝硬変(3回食)群では、朝、昼、夕で614、631,687kcalとなった。また肝硬変(4回食)群では603、622,615kcalで夜食の157kcalを含めて合計1997kcalとなった。肝硬変(3回食)群では早朝空腹時の基礎エネルギー消費量(BEE)に対する安静時エネルギー消費量(REE)である%REE(REE/BEEx100)は100.5%と代謝亢進がみられたが、肝硬変(4回食)群は87.8%と減少し、さらに対照群と似た代謝パターンを示した。RQは肝硬変(3回食)群では0.674と対照群の0.806に比し有意に低値を示していた。4回食を実施したところ肝硬変(4回食)群の早朝空腹時RQは0.728と有意に上昇がみられた。また、血中遊離脂肪酸濃度は肝硬変(3回食)群は542mEq/L、4回食群は439mEq/Lと低下傾向がみられた。肝硬変(4回食)群は肝硬変(3回食)群に比し早朝空腹時の代謝パターンは対照群と似たパターンを示した。以上の結果から、夜食を加えることで肝硬変患者において夜間空腹時の蛋白質異化と脂肪組織分解が抑制されたと考えられる。このように、肝硬変の代謝パターンが4回食を行うことにより、対照に近づくことが本研究で示された。このことが、肝硬変患者の予後やQOLに影響するかを示すことが今後の課題であり、夜食の長期的な効果を検討するため今後も、本研究を継続する必要がある。
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