タンパク質の非酵素的糖化反応(グリケーション)は、本来食品加工過程において起こることから、食品学分野で盛んに研究されてきた。近年、同様の現象がヘモグロビンをはじめとする生体内のタンパク質で見られることが明らかになり、本反応の結果生じる構造や機能の変化が、糖尿病のみならず種々の病変や老化などに深い関わり合いを持つとして議論されている。中でも糖尿病合併症の一つである白内障は、レンズタンパク質のグリケーションに起因するものとされ、多くの研究者が取り組んでいるところである。これまでに、ビタミンB6(B6)欠乏動物において数種のB6酵素の動態について研究を行った結果、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST))について活性の低い異常分子が存在することを見い出している。そこで、本研究では、ビタミンの栄養状態と糖化との関連を糖尿病を絡めながら検討することを計画した。 まず、B6栄養状態の異なる糖尿病ラット(Streptozotosin注射)を作成し、生体全体症状の観察(体重、血糖値、尿糖など)とアルブミン、ヘモグロビンのグリケーションおよびAST活性と、その量的・質的変化を検討した。ASTの量的変化をAST抗血清により行ったところ、糖尿病ラットの肝臓において顕著な増加が見られた。また、糖化タンパク質の抗血清を用いた免疫学的測定、および等電点変化の観察により、ASTの質的変化を見たところ、糖尿病によりグリケーションが促進されていることが明らかとなった。
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