研究概要 |
内分泌かく乱物質は,野生生物やヒトの内分泌をかく乱し生殖障害などを起こすことが疑われる多くの合成化学物質で,大部分はエストロジェン様作用を示す.食用の大豆などに含まれる植物性エストロジェンもエストロジェン様作用を示すが,大豆食品自身のその作用は明らかではない.本研究は植物性エストロジェン単独と成分の混合物である大豆食品のエストロジェン様作用を比較評価しようとするものである.エストロジェン様作用を検出するために卵巣摘出マウスによる子宮肥大試験法を用いるが,飼育飼料に内在する植物性エストロジェンの影響を避け,作用に関するマウスの系統差を把握しておく必要がある.そこで,飼育飼料およびマウスの系統がエストロジェン様作用におよぼす影響を検討した. 植物性エストロジェンを除外した精製飼料(AIN-76A)あるいは大豆を原材料とした市販固型飼料によって,ddY系,ICR系,B603F1系卵巣摘出マウスを10日間飼育した後子宮重量を測定した.AIN-76A飼育群の子宮重量は市販固型飼料飼育群と較べて差はないが若干増加し,その影響はddY系〉ICR系〉B6C3F1系の順になった.また,同様の飼育条件下で7日後からポジティブコントロールとして17β-エストラジオール(0.8mg/kg)を3日間経口投与すると,すべての群で子宮重量が増加したが,その影響はICR系〉ddY系〉B6C3F1系の順になった.市販固型飼料の植物性エストロジェンをHPLCで分析した結果,大豆成分のイソフラボン類を定性的に確認した. 植物性エストロジェンのエストロジェン様作用を調べるための卵巣摘出マウスを用いた子宮肥大試験法としては,植物性エストロジェンを含まないAIN-76Aを飼育飼料とし,AIN-76Aの影響があってもエストロジェン様作用を高く検出できるICR系を用いた方が良いと考えられた.
|