人間は油脂を含む食品を口中でどのように感じるかを明らかにする研究の一環として、本研究では、油脂に共存する味や匂い代分と"あぶらっこさ""との関係について、以下のように検討した。 1.五基本味が"あぶらっこさ"に及ぼす影響 コーン油、蒸留水、増粘多糖類、乳化剤(卵黄あるいはカゼインナトリウム)から成る水中油滴型エマルションを調製した。油相体積分率は0.75および0.35とし、水相に呈味物質(ショ糖、塩化ナトリウム、酢酸、グルタミン酸ナトリウム)を濃度を3段階に変えて添加した。すでに粘度が"あぶらっこさ"に影響することが明らかとなっているので、増粘剤あるいは乳化剤の種類や濃度を変え、粘度が一定になるよう調整した。 研究室パネル20人による官能検査を行った。各呈味物質の添加により味が変化すること、酢酸添加のみ匂いが変化すること、いずれの試料間にも口中で知覚されるの粘度の差がないことを確認した。"あぶらっこさ"については、酢酸添加エマルションのみ有意に低下した。また、ノーズクリップで鼻をつまんで匂いを遮断しても同様の結果が得られたことから、酢酸の酸味が"あぶらっこさ"に影響することが示唆された。 2.香辛料の匂いや辛味が"あぶらっこさ"に及ぼす影響 1と同様にエマルションを調製し、水相あるいは油相に香辛料(コショウ、ショウガ、カラシ)を添加した。1と同様の官能検査を行ったが、"あぶらっこさ"については、いずれの試料についても差は見られず、香辛料は"あぶらっこさ"に影響しないことが明らかとなった。
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