人間は油脂を含む食品を口中でどのように感じるかを明らかにする研究の一環として、本研究では、油脂の状態と"あぶらっこさ"との関係について検討した。 1.油脂の劣化状態と"あぶらっこさ"との関係 コーンサラダ油に0〜8日間の可視光線照射、あるいは0〜1.0ppmのn-ヘキサナールを添加し、劣化油を調製した。この油を用いて水中油滴型エマルションを調製し、20名の訓練パネルにより官能評価を行った。その結果、劣化油の試料は有意に劣化臭が強いと評価されたが、"あぶらっこさ"は変化しなかった。このことから、油脂の劣化臭は"あぶらっこさ"には直接影響しないことが示唆された。 2.油脂の硬化度と"あぶらっこさ"との関係 パーム油完全固形脂(ヨウ素価2.0)とコーン油(ヨウ素価124.3)を加熱混合して、異なる融点(15〜49℃)の試料油脂10種を調製した。15名の訓練パネルにより官能評価を行ったところ、融点が高い油脂ほど口どけが悪く、粘度が高いと評価されたが"あぶらっこさ"は変化しなかった。このことから、油脂の硬化度によるテクスチャーの違いは、"あぶらっこさ"に影響しないことが示唆された。 3.油脂を構成する脂肪酸の鎖長と"あぶらっこさ"との関係 中鎖トリグリセライド(MCT)、長鎖トリグリセライド(LCT)および混合油(MCT・LCT)を用いて、24名のパネルにより官能評価を行った。その結果、MCTは有意に"あぶらっこさ"が低いと評価された。MCTは、匂い、風味、粘度も低いと評価されており、これらの要因が複合的に"あぶらっこさ"に影響すると推察された。
|