膨化食品の焙焼中の熱移動および物質移動を推算するための基礎データを得ることを目的として、焙焼過程におけるケーキの物理的変化(内部温度と体積変化)の測定を行った。 試料には配合および気泡含量の異なる3種のケーキ生地を用いた。ケーキAは油脂を含まないスポンジケーキ生地、BおよびCはバターを含むバターケーキ生地で配合は等しく、Bは卵起泡、Cはバター起泡で調整した。オーブンは実験用のものを使用し、熱伝達方式は対流加熱、風速2水準(1.0m/s、1.5m/s)、庫内温度2水準(160℃、180℃)の条件で焙焼した。焙焼前生地の気泡の体積分率は0.637(A)、0.394(B)、0.192(C)であった。焙焼中の体積変化はデジタルビデオカメラで撮影し、画像解析ソフトを使用して解析した。膨化は焙焼初期から始まり、気泡含量の高い試料Aが最も初期の膨化速度が速くなっていたが、他の二つの試料では差が認められなかった。いずれの試料においても完全に内部に火が通り加熱が終了する直前に、体積が若干収縮する現象が観察された。最終製品体積について加熱条件の違いによる差は認められなかった。焙焼後の気泡の体積分率(平均値は0.787(A)、0.715(B)、0.618(C)であった。ケーキ生地の内部温度はCA熱電対を使用し、温度データコレクタで測定した。ケーキ生地は周囲の温められた空気から熱を受け、周辺部から温度上昇が始まるが、膨化と共に中央部の生地が押し出されるように上部に移動し、最終的には中央表面の内側に最後に加熱が終了する部分が存在することが確認された。 今後は、焙焼中の重量変化および焙焼後の水分量(表面および内部)を測定する予定である。これら焙焼中の物理的変化を定量的に把握することによって、気泡を含む食品の熱物性値に関する考察を行いたい。
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