研究概要 |
前年度から引き続き行った黒ゴマ種皮水抽出物の精製の結果として、これまでは注目してこなかった区分、すなわちXAD-7カラムに通液したときの非吸着部から、化合物aを単離した。現在構造解析を進めているが、UVスペクトル吸収からリグナンではないことが予想され、本研究以前に黒ゴマ水洗廃液から得たリグナン(pinoresinol, larisiresinol, hydroxymatairesinol異性体2種)よりも高極性であり、黒ゴマ特有ではないが、ゴマ種子短時間水抽出物には比較的多く存在する化合物であることがわかった。 続いて、化合物aおよび既知の4種のリグナンの含有量とDPPHラジカル捕捉能から、各種ゴマの特徴づけを試みた。試料として産地の異なる黒ゴマ4種(ミャンマー産、中国産、ベトナム産、タイ産)と、茶ゴマ2種(ミャンマー産、スーダン産)を用い、それぞれの短時間水抽出物をHPLC分析およびDPPHラジカル捕捉能活性測定に供した。HPLC分析では、定量する5つの化合物が単独ピークとして検出できる条件を、グラジェント装置(前年度助成により入手)により検討し、決定した。 結果として、黒ゴマ4種のDPPHラジカル捕捉能活性はαトコフェロール(0.2μM)の2/3程度であり、茶ゴマ4種に比べて1.5倍程度高いが、リグナンおよび化合物aの総含有量は茶ゴマと同等か低い数値となった。また総含有量と活生の間に相関はなかった。ただ、リグナン4種の中でも活性の高いhydroxymatairesinol含量が多いものは、比較的活性も高くなる傾向は認められた。 今回のHPLC分析により、各種ゴマに共通する成分がまだ多数存在することがわかり、今後は、未知の高極性区分の精製を進めると共に、今回調査できなかった白ゴマも含めた各種ゴマの特徴づけを明確なものとし、論文にまとめたいと考える。
|