研究概要 |
簡易反発硬度試験(エコーチップ硬さ試験)を用いた石造文化遺産の健全度調査手法を新たに開発するための研究の一環として,本年度は特に,(1)試験条件が与える影響調査(岩石の寸法・形状や表面粗度などに関する検討),(2)新鮮な岩石を用いた基本特性調査(物理・力学特性との相関などに関する検討)について実施した。 得られた主な知見は次の通りである。(1)供試体の大きさに関しては,厚さおよび幅が4cm以上あれば,反発硬度Lの値は下敷材料の影響を受けない。(2)供試体の表面粗度については,石膏のような比較的軟質な供試体材料の場合,研磨紙の40番(研磨材の平均粒径≒400μm)程度の粗度はL値に影響を及ぼさない。また,供試体の端面が同程度の凹凸を有している場合,L値は硬質な供試体ほど試験面の凹凸の影響を受けやすい。(3)石膏供試体を用いた打撃回数に関する検討の結果,回数を重ねるに連れてL値が大きくなる傾向が見られるが,打撃回数が3〜4回以降になるとL値の増加傾向は小さくなって収束傾向にある。(4)L値と密度ρ,一軸圧縮強度qu,超音波伝播速度Vp,Vs,ヤング率Eとの間には,いずれも正の相関関係が存在し,特にL〜ρ関係とL〜qu関係の相関係数が比較的大きく,より強い相関関係が存在する。(5)以上の(1)〜(4)で得られた知見は,既往の研究事例の中で報告されている結論と概ね調和的である。(6)一方,新たな知見である打撃方向に関しては,様々な打撃方向に対してエコーチップ硬さ試験を実施する際には,鉛直下向きの初期設定条件で測定を実施した後に打撃方向に関するL値の補正を行う必要がある。
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