平成12年度に引き続き、出土木材の生物劣化を抑止する方法の検討を行った。 12年度に行った抗菌性試験をさらに長期間にわたって経時変化を観察した。 試験対象としてヒノキチオール3種(濃度を変えたもの)・竹酢液・食酢を用い、各々をサンプル材と保管水の入ったビーカーに混入した。UV測定器を使い、微生物の培養を観察した。 短期間では効果の見られた食酢・竹酢液だったが、揮発成分が減少するにつれて効果が薄れ、微生物の繁殖が見られた。食酢と竹酢液を比較すると食酢の方が効果の減少が速かったが、これは液中に含まれる酢酸成分の濃度と糖分に由来すると思われる。 一方で、ヒノキチオールは持続性のある効果が得られた。濃度の違いによる効果の違いは特に見られなかった。長期間、安定した抗菌性があることが明らかになった。 ヒノキチオールはヒノキから抽出されるものの総称で、含まれる成分が100種を超えて複雑で抗菌成分が特定されていない。そのため、明確な抗菌作用機構の解明にはいたらなかった。 このほか、イソプロビルメチルフェノール(商品名:ビオゾール)やワサビ抽出成分のワサオーロ、トルマリンセラミックボールなどを検討したが、水に不溶だったり、揮発性が強いために効果の持続性が望めなかったりと問題があったため、試験するにはいたらなかった。 今後は、最も効果のあったヒノキチオールの実用化をめざしてさらなる研究を進める。 まず、水に溶けにくく、金属イオンと錯塩を形成しやすい特性を保存処理や取り扱い上の問題点として検討する必要がある。
|