研究概要 |
算数から数学への移行を促す教材として,代数分野からは中学校1年の正負の数,文字と式,方程式を,そして幾何分野からは図形の作図をとり上げ,各教材に関して,現場の中学校教師と共同して,授業開発を行った。 代数分野に関しては,まず,教材を未習の生徒に対してインタビュー調査を実施した。そこでは,方程式に関わる問題解決の過程の中で文字と式の単元で学習する内容に関わるアイデアが生じることが分かり,さらに,そうしたアイデアが生じる過程について知見を得た。それを,「全体論的な視座からの代数の導入過程に関する研究-代数的発想の生起の様相-」として,学会誌に発表した。 次に,インタビュー調査で明らかになった内容や,先行研究の文献研究から得られた知見をもとにして,現場教師と共同で2002年4月から10月にかけて,中学校1年の数学の授業開発を行った。授業は毎時間ビデオカメラで録画して,それを分析,検討し,その成果の一部として,代数の導入過程の単元構成について,「数学授業における場を視点とした代数の導入過程の構成に関する研究」と題して論文を発表した。 幾何分野に関しても,中学校教師と中学校1年の作図の授業開発を実施し,その授業を分析して,学会誌に発表した。一つは,「経験的認識から理論的認識への変容過程に関する研究-図形の作図とその正当化の過程に焦点を当てて-」と題して,生徒の図形認識の様相が作図の学習を通してどのように変容するかを分析・考察した。もう一つは,「Geometric construction as a threshold of proof : The figure as a cognitive tool for justification」と題し,図形の形のイメージ,さらにはその操作的なイメージが,作図の学習や論証への移行をどのように支えているかについて分析した。
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