本研究の目的は、対象を構成要素に分解し、それらを合成し直すことによって、対象への理解を深める、という科学の方法論の、教育への応用である。本年度は、計画に従い、主に次の2点を行った。すなわち、1)カリフォルニア大学バークレー校で開発された、論理的無矛盾性よりも概念間の整合性を重視した思考を支援するConvinceMEというコンピュータシステムについて、日本語化を行ったこと、および、2)概念の分解・再合成という枠組みで心理学的な実験を行った。 1)のConvinceMEについては、元開発者と相談しながら、オリジナル版のあまり本質的ではない機能を取り除き、改良を加えた。その結果、動作が軽快になり、操作性が向上したという結果を得た。 2)については、ConvinceMEを用いて考えさせるグループと用いないグループの2つを設定し、家庭用ゴミの分別課題を実施した。この分別課題では、家庭から排出されるゴミをいくつか挙げて、その成分を吟味させた上で、分類基準と照らし合わさせ、それぞれが、「可燃ゴミ」、「不燃ゴミ」などのどれに分類されるべきか答えさせた。これは心理学における概念形成学習課題になっている。 この報告書を作成している時点では、実験が終了したところなので解析は済んでいないが、おおむね、つぎの2つの結果を得た。すなわち、ConvinceMEを用いたほうが分類成績が向上する、すなわち理解が進むこと、および、対象の分解・再合成だけでは理解は必ずしも向上しないことである。
|