本年度は、科学研究費補助金交付申請書に掲げた研究実施計画のうち、次の2点に関する研究を重点的に行った。1点目は、「情報収集活動の分析と、協調的情報フィルタリングの動作モデル構築」である。これは、学習者が問題解決のためにインターネットを利用して行う情報検索・収集活動に着目し、目的によってどのような情報収集活動を行うかを調査・分析するものであった。そのためにいくつかの実験を行い、個人単独で情報収集を行う場合と他の学習者と協調して情報収集を行う場合の行動の観察から、システムに実装すべき協調的な情報フィルタリングのモデルが抽出された。第2点目として、「学習者の情報収集活動に基づくユーザモデル構築手法の提案」について研究を進めた。これは単なるキーワード検索等とは異なり、学習者の情報収集過程における経験則・戦略といった固有の特徴を、知識処理技術を用いて抽出し、それを以後の情報収集に利用するというものである。具体的には学習者のブラウジング履歴から、その特徴を表すプロファイルの構築手法を提案した。これを他の学習者の情報収集時に適用することによって、自分とはスタイルの異なる情報収集を行うことができ、結果として多角的な情報収集支援が実現される見通しである。以上の成果を用いて、インターネット上で利用可能な協調的情報フィルタリングシステムを構築し、現在は評価のための実験を行いつつある。また、コンピュータ上に構築した探求型学習支援システムとの接続についても検討を進めている。
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