これまでに、2者間による共同作業のモデルの1つである囚人のジレンマゲームをCSCW場面に採用し、作業相手の動画像を呈示することが作業者の協調的行動にどのような影響を及ぼすか検討されている。そして、相手の動画像を呈示することは、利得点表という作業内容の違いによって、作業者の協調的行動を促進させる場合と減少させる場合があることが示されている。しかし、どのような動画像の特性が作業内容によって作業行動を変容させるかという点については明らかとされていない。 そこで、本研究では、相手の動画像を呈示すること、つまり、相手の顔情報が作業過程や作業方略にどのような影響を及ぼしているか、以下のような、より詳細な側面に着目し実験的検討を行った。 (1)相手の動画像を呈示することは、相手の行動過程の理解を促進させるか。 (2)相手の動画像を呈示することが選択方略にどのような影響を及ぼしているか。 実験計画は、これまで行ってきたものをベースとし、利得点表要因(利得点が必ず漸増する(++)条件と選択によっては利得点がマイナスになることもあり得る(+-)条件)、動画像要因(動画像呈示条件と動画像なし条件)と設定し、16組(32名)を対象として実験を実施した。 (1)について明らかとするために、囚人のジレンマゲームにおいて、被験者には作業相手の選択行動を予測させた。その結果、動画像呈示条件と動画像なし条件において有意差が見られなかった。 (2)については、主観的評価に基づいた結果であるが、利得点表要因において、(+-)条件の方が、(++)条件よりも協調的行動をとることを明らかとされた。しかし、動画像要因は有意ではなかった。 本研究より、相手の動画像呈示が、相手の作業行動の理解や選択方略に影響を及ぼす特性は示されなかった。
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