研究概要 |
本研究では,感覚障害者間の双方向コミュニケーションを実現するためのコミュニケーションエイドとなる通信端末インタフェースを開発すると共に,映像・音声・テキストが有意的に結合されたマルチメディア言語の基本設計思想の確立とその有効性を明らかにすることを目的とする. 本年度は,マルチメディア情報に含まれる映像や音声,テキストなどに等価な協調性を持たせた共通メディア情報言語(以下、マルチメディア言語と呼ぶ)の概念を新たに提案し,その異種感覚障害者間の相互伝達手段への実用性の検討を行った.研究実績は以下のとおりである.(1)関連福祉機関との打合せ及びアンケート調査(障害者のコミュニケーション現状調査)を実施し,視覚障害者および聴覚障害者によるコミュニケーション手段の実状調査を行った.その結果,単に視覚障害といっても全盲から強度の弱視,斜視,視野障害など個人によって障害度は,千差万別であり,盲聾者など多重の感覚障害を有する障害者も少なくないことが分った.本研究では,これら全ての人が共通にコミュニケーションが行える環境の構築が最終目標であるが,盲聾者については触覚や振動等による伝達補助が必要であり,音声と文字,画像など提案するマルチメディアを有効に利用することができないため,今回は本研究の対象からは外すことにした.以後,本研究で対象とする感覚障害者とは,視覚障害若しくは聴覚障害の単一感覚障害をいうものとする.(2)コミュニケーションにおける基本用語の設定のため,日常会話などから非常に利用度の高いものを選定した.この基本用語を組み合わせることでコミュニケーションを実現するものとし、新たに提案するマルチメディア言語の原型とした.また,将来の拡張性を考慮し用語追加登録の方式も検討を行った結果,マルチメディア言語の部品化の概念を導入し,ユーザ個人に特有な用語については追記可能な設計とした.(3)上記思想に基づき,視覚障害者や聴覚障害者などの感覚障害者間の双方向から見て同一性が保持されるようにマルチメディア言語を定義する.具体的には一般に欧米でトーキングエイドとして利用されているPIC(ピクトグラム)と呼ばれる絵図画を基本として,これに音声情報と動作情報、テキスト情報を追加したものをマルチメディア言語として提案する.すなわち,日常会話に用いられる用語や動作、感情表現、固有名詞をPICを用いて音声情報やテキスト情報,絵図などを有機的に取り組むことにより各障害者間で識別可能な感覚情報が保持されるような共通のコミュニケーションメディアとして新たにマルチメディア言語を定義した.(4)実用評価用のプロトタイプ開発のため(次年度予定),提案したマルチメディア言語に用意すべき基本用語のデータベースの構築を行った.次年度は,これらの言語データベースを利用したプロトタイプを構築し,当該研究によって得られた異種感覚障害者間に有用なアクセシビリティの知見について実用効果を検討し,当該関連学会において研究発表を行う予定である.
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