研究概要 |
本研究の目的は,これまでのマイクロエスノグラフィーの方法論の限界として,ある意味で仮定されてきた,相互作用のパターンと生徒たちの数学学習との整合的関係そのものに焦点をあて,この関係を実証的に解明することである。 本年度は,まず,先行研究に見られる典型的ないくつかの相互作用のパターンの事例を取り上げ,相互作用のパターンが数学学習に及ぼす影響,両者の関係について理論的に検討した。 結果として,次の知見を得た。 (1)相互作用のパターンにうまく参加していることと数学の学習がうまくなされていることとの間の関係は慎重に見なければならないこと。 (2)一方,相互作用のパターンへの参加を通して学習は常に起こっていると考えられる。そして,相互作用のパターンが数学学習に及ぼす影響は主にメタレベルで生起する。 次に,相互作用のパターンと数学学習との間の関係を実証的に検討するために,研究代表者と授業者とが協同で実施した,一連の授業のビデオデータ,筆記録,フィールドノート,及び授業後の生徒たちへの臨床的インタビューのデータを対象として,メタ知識の視点から,特に,一人の生徒に注目し,この生徒の視点から授業における相互作用と数学学習との間の関係を理解することを試みた。 結果として,次の知見を得た。 (1)授業に積極的に参加している生徒は,そこで起こっている相互作用と整合する数学学習を成立させているということ。 (2)数学学習に影響する授業の相互作用の質は,教師だけではなく,学習者の参加の仕方によって影響を受けているということ。
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