昨年度の研究によって、幕末・明治以降約150年の<美術教育実践史>を教師の「規範」という視点から問題を抽出し、基礎資料の整理を行った。そして、「規範」意識の構造化を試み、美術科教育学会誌22号に発表した。本年度は、これをふまえ、現代に生きる教師の意識にある規範を考察した。 当初設定した「研究課題1、2 明治期から現在までの教師の実践「規範」の変遷」については、昨年度作成した基礎資料を補充するとともに、次の課題研究3の考察に生かした。「研究課題3 本学大学院の現職教員、付属学校教員、公立学校教員に対する実践<「規範」意識と授業>調査」についてはアンケート調査や面接調査を行うとともに、ビデオカメラを用いて、その教師の授業撮りを行い、授業記録を作成した。 その調査研究で、教師の意識の中心にあった、鑑賞教育、図画工作科・美術科と「総合的な学習の時間」との関連について、奈良教育大学教育実践総合センター紀要11号(通巻25号)、美術科教育学会誌23号で、それぞれ誌上発表した。また、小学校領域「造形的な遊び」に関する意識については、第24回美術科教育学会(2002年3月)で、口頭発表する予定である。 鑑賞教育の沈滞は、第2次大戦直後の教育思潮の影響が大きく、ここ10年でようやく見直しがはかられていること、美術教育と「総合的な学習の時間」との関連において、子どもの思考からの考察が足りないこと「造形的な遊び」拡大に関する懸念の所在などについて指摘、考察した。 「規範意識は、学習指導要領、教育改革理論、実践環境や内面化された意識などとの関係の中で重層的に形成されている。ある美術教育実践を進めていくときの教師の「規範を提示・考察し、授業改善の根拠とするべく、今後も継続研究していきたいと考えている。
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