本研究の目的は、複数の英語基本語彙リストを客観的に評価するための「操作的な指標」を作成することであるが、今年度は「定義可能度」という指標を打ち立て、語彙リストの評価を試みた。その際、日本の英語教育に影響を与えた海外の選定語彙リスト、および日本において選定された語彙リストを対象とし、CD-ROM版Oxford English DictionaryのDefinition Text Searchから得られた「他の語の定義に用いられる度合い」を数値化したデータによる比較を行った。その結果、頻度に基づく比較においては必ずしも評価の高くない語彙リストであっても、定義可能度においては高い評価を与えられるものがあることを示し、英語基本語彙リストを評価する基準としての「定義可能度」の妥当性を論じた。さらに、この定義可能度により英語教科書語彙の評価を行い、以下の2点を明らかにした。第一に、日本の英語教育において選定されてきた語彙項目は高頻度の語ばかりではなく、定義可能度の高いものも重要視されてきたこと。第二に、頻度と定義可能度によって説明のつかない語彙項目が多くの教科書に含まれており、それらは言語を用いた生活文化の根幹に関わるものであること。この結果を受け、各選定語彙リストにはその目的や選定過程を色濃く反映した語彙項目も多く見受けられることから、頻度や定義可能度という客観的な語彙リストの評価基準以外に、質的な分析による評価の重要性を論じ、今後の課題とした。
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