研究概要 |
英語基本語彙の選定と評価の基準を確立することを目指した本研究において、複数の英語基本語彙リストを客観的に評価するための「操作的な指標作り」のための研究を中心に行ってきた。昨年度指標として打ち立てた「定義可能度」を用い、今年度はより実践的な立場から、中学校英語教科書ならびに高校生・大学生用英語基本語彙リストの評価を行った。その結果、中学校の英語教科書は頻度、定義可能度とも比較的安定した数値を示していることを明らかにした。高校生・大学生用英語基本語彙リストに関して言えば、語数が4,000〜5,000語に達することから、いずれも頻度、定義可能度においてかなりの高い比率を示しており、1,000語レベルで行う中学校英語の数量的評価ほどの明確な差が出にくいことを指摘した。 また、内外の図書館等において実施した文献調査を通じて、本研究に関する歴史的な検討を深めることができた。特に英国においては、日本では入手できないHerman Bongersが欧州で発表した研究を中心として、1920年代から1930年代にかけて日本の文部省英語教授顧問を務めたHaarold E.Palmerの残した語彙選定と、それに通じる海外諸国における英語基本語彙研究の歴史的な流れを調査することができた。また、国内の文献調査によって、これまであまり脚光を浴びることのなかった竹原常太の教科書編纂と直結した語彙調査について深めることができた。これらの調査を通じて、基本語研究における客観的なデータの重要性を歴史的な観点から裏付けることができたことは、本研究にとって極めて重要であった。 今後は、本研究を通じて明らかになった客観的な指標を有効に活用し、小学生に対する英語教育を視野に入れた「入門期の英語学習者のための語彙選定」に関する研究へと進めていきたい。
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