本年度は以下の二点を行った。一つは、書かれた話し言葉からの用例をできるだけ多く採集するため、シナリオおよび対談集をテキスト化し、その中から複文表現を抜き出す作業を行った。来年度もこの作業を進め分析の材料とするものである。そして、新たな用例と、従来のコーパス(小説・新聞・随筆・論説集)より採取した用例を活用することにより、さらに複文の記述を進めた。 本年度の研究成果は以下の形でまとめられた。第一は、『セルフマスターシリーズ条件表現』(共著)である。これは、条件表現全般に対して、日本語学習者が独習できるよう文法的な解説と練習問題を積み重ねていく形で構成されている学習書であるが、研究代表者は主に逆接条件付けの項を執筆した。この中には、今年度の研究で現れてきた新たな用法の記述も記載されている。本書は2001年4月に刊行予定である。第二は、論文「複文の類型と日本語教育」であり、『言語情報科学シリーズ第5巻言語学・日本語・語学教育』(東京大学出版会)に掲載予定である。これは2001年5月に刊行予定である。この中では、複文の体系的な分類と、それが日本語教育においてどのように応用されるかについて論じた。第三は、論文「「〜したところだ」と「〜したばかりだ」」であり、『東京大学留学生センター紀要』11号に掲載予定である。これは2001年3月末に刊行予定である。この中では、初級で扱われるこの2つの類義表現がどのように異なるか、また単に「〜した」という表現と比べてどのような点が特徴であるかを今回採取した用例を活用し論じた。 これらの成果の中では、本年度の研究において採取した用例や、分析した結果が十分に反映されている。
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