研究の目的 本研究は、仲立を分析するために、公共圏(public space)とメディアの概念、そして受容(reception)・討論(argumentation)・相互理解(inter-comprehension)の問題意識・枠組みを中心に、国内外のマネージャー、教員と日本語学習者から恒常的なニーズのある「関係と認識的・行動的構築の学習」に関して、関係調整能力育成の基礎資料となるエスノグラフィー的な資源の作成と、それをWeb形式で海外にも流通させる手段の開発を行う。 研究活動と成果 本研究は、三つの研究活動からなり、平成12年度に、そのうちの二つを終了した。ひとつは、文部省科学研究費「日本語教育へのコミュニケーション能動的受容理論の導入に関する研究」(奨励研究A 90257808;平成9〜10年度、研究代表者:ロラン・マリージョゼ)のデータに基づいて、日本語母語話者(マネージャー、教員)と日本語学習者の仲立を取り巻く問題について分析した「関係調整能力」のモデルの構築である。その成果、「コミュニケーションと言語:多民族的背景における日本企業のマネージメント」を2000年に『DARUMA』から出版した。もう一つは、「関係と認識的・行動的構築」の分析で得られた情報・知識を、国内外の日本語教育機関に提供したことである。その成果は、異文化教育学会における『A Multi-Disciplinary Approach to Language and Social Teaching for Students of the Japanese Language:Start with the Self』(異文化教育学会第21回大会発表抄録、青山学院大学、p.100-101)大会ラウンドテーブルの実施である。さらに、そのコミュニケション学に関する情報・知識は、「コミュニケーション関連文献等情報一覧」(国立国語研究所研究報告書)にまとめ出版した。 得られた知見 (1)科学的日本語教育の推進には、コミュニケーション及び近接テーマの多様な研究において概念的フレームワークを立てるための社会学的アプローチが必要である。 (2)受容研究のフレームワークには、科学的日本語教育の概念化、コミュニケーションを用いる特徴及び理解が必要である。 (3)科学的日本語教育にはコミュニケーションの社会的使用と用語や概念化の条件等の分析が必要である。
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