研究概要 |
赤池情報量規準(AIC)最小化法などの統計的モデル選択において,良いモデルをひとつだけ選ぶことが一般的であるが,実際には規準の分散が比較的大きいことが多い.したがって,モデル選択の信頼性をデータに基づいて定量的に評価し,モデルの「信頼集合」を多重比較法によって構成する方法をこれまで提案してきた.本研究では,リサンプリングによって選択バイアスの補正を行い,多重比較よりもモデル信頼集合を絞り込む方法の開発を行っている.解析的に解を与えるのは極めて困難であるので,目的とする性質を持つ信頼集合を,数値的に計算するための方法論とアルゴリズムを考案している. 本年度の主な成果は以下のとおり. 1.基礎的な研究として,ブートストラップリサンプリングによるバイアス補正の新たな方法を開発した.これはスケーリングという素朴なアイデアに基づき,非常に簡単なアルゴリズムにもかかわらず3次の漸近精度をもつ方法である.これは一般的な方法なので,ブートストラップ信頼区間の計算には広く利用可能である.理論的な側面に関してはStanford大学の研究者との意見交換が役立った. 2.多重比較によるモデル信頼集合を分子系統樹推定へ応用することは,共同研究を通して引き続き行っている.セミの進化を明らかにする研究(Duke大学他と共同)や,哺乳類の進化の研究(東工大他と共同)に貢献した.
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