平成13年度内の本研究において得られた成果を、(1)非線形セミ・パラメトリック推測に関する研究、(2)ブートストラップ法に関する研究、(3)個表開示の理論に関する研究、の3点に要約できる。 1 非線形セミ・パラメトリック推測に関する研究 ブートストラップ擬似尤度や、動的推定関数の概念を提案し、その理論的・実証的研究を行った。これらの方法は、推定方程式の多重根から合理的推定量を判別するために有効であることを確認した。これらの基礎的研究に加え、最近の成果を中心に、セミ・パラメトリック推定関数に基づく非線形統計的推測に関して系統的に研究した。平成13年5月3日から平成13年5月15日(13日間)に研究代表者の前任地である統計数理研究所(所属番号:913)に研究代表者の共同研究者であるワーテルロー大学のChristopher G. Small教授を招聘し、推定関数に基づく非線形統計的推測に関する共同研究を行い、特に2002年に発行させる予定である、モノグラフ「Nonlinear Statistical Methods : estimating equations and artificial likelihoods」に関する打ち合わせを行った。 2 ブートストラップ法に関する研究 縦断的データの解析において、田栗正章教授(千葉大学理学部)と共同研究をし、動的ブートストラップ法の提案および精密化を行った。また、リモート・センシングデータの解析において、動的ブートストラップ法の有効性を確認した。さらに、ブートストラップ法を最近までの成果を中心にレビューし、得られた成果を「ブートストラップ法の基礎」(予定)(汪 金芳・田栗正章、岩波書店)に纏めた。 3 個表開示の理論に関する研究 不確実区間の理論を提案し、個表開示のための方法論としての有効性について考察した。
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