本研究では、グラフにおける独立全域木の概念をより強くした完全独立全域木(辺素全域木の集合で、任意の二頂点に対して、各全域木における道が互いに内素なもの)を対象とし、その存在性および構成法について研究を行なっている。完全独立全域木は、本研究で新たに導入した概念であり、超並列計算機の相互結合網やネットワークにおける耐故障性の問題に応用を持っている。昨年度に得られた知見をもとにさらに考察を進め、以下のような結果を得た。 1.昨年度に4点連結極大平面グラフには2つの完全独立全域木が存在すること及び与えられたグラフにおける2つの完全独立全域木を見つける問題はNP困難であることを証明した。本年度は、4点連結極大平面グラフにおける2つの完全独立全域木を見つける線形時間アルゴリズムを設計した。 2.昨年度にk点連結ラインダイグラフの底グラフにはk本の完全独立全域木が存在することを構成的に証明した。本年度はこれらの完全独立全域木の構造的特徴に着目し、類似した構造へのダイグラフの分解を、ダイグラフの多層格子埋め込みに応用した。多層格子埋め込みはVLSIレイアウトのモデルとして提案されているものであり、特に各辺の描画が同一層に限定されるものが実用的な観点から望ましい。本研究では、この限定条件を満たした、d-正則ダイグラフの反復ラインダイグラフのd層へのO(n^2)-領域の埋め込みを与えた。ここで、nは反復ラインダイグラフの頂点数である。
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