研究概要 |
新技術導入にともなうシステム開発の分析を通して,要求仕様レベルの改善見積もりが実際の業務改善につながることを,プログラミング教育支援システムの開発において実証した. まず,実際に行われているプログラミング支援面接の観察と分析を行った.面接官6人,被面接者40名程度のデータを収集し,PC上にデータベース化した. 収集したデータをもとに研究代表者が既に提案済である機能要求に関する変更支援法を最初に適用した結果,セキュリティ,効率,コスト,ユーザー親和性などの非機能要求に関する部分の改善見積もりを明示的に表現できないことを発見した.そこで,従来の支援法に加えて非機能要求をあつかうためのゴール指向要求モデルを利用した分析を行った. 他研究者によって既に提案されているゴール指向手法の多くは有向グラフを利用して非機能要求を表現する.この表現方法はその記述性は高いが,一覧性,ユーザー親和性が低く,実際の顧客との交渉に利用されることが多い要求仕様書の要素としては不適切である.そこで,研究代表者は一般ユーザーにも親和性の高い表形式での非機能要求の記述・比較様式を開発した.尚,本様式は,業務内における振る舞いを記述するための図式言語,シーケンスダイヤグラムと組み合わせて利用することが可能である. 分析対象となった面接型教育支援システムは,システム分類としては,ネットワーク接続型,分散・対面ハイブリッド型のグループウェアシステムである.また,面接や評価が関係するため,高いセキュリティレベルが要求される.特にこのセキュリティ部分に関する改善見積もり法は,独立した方法としてまとめた.具体的には,システムが動作するネットワーク環境とシステム自体の機能の関係を形式的仕様記述言語Zで記載し,システムを構成するPCやプログラム,データがネットワーク上を移動した場合でも,意図したセキュリティが保証されていることを確認するための手法を構築した.これによって開発・運用後の不本意な機密漏洩が起きないことを論理的に保証できる.
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