研究概要 |
まず,実数のグレイコード展開を元にして,不定元を高々1つ含む無限列(1ボトム-列)上での実数の表現方法,および,1ボトム-列を入出力するための,2つのヘッドでのストリームへのアクセスと不決定性を持つ計算機構(IM2-machine)を考案し,それによって得られる実数上の計算概念が通常のものと一致すること,このコード系の持つ再帰的構造を用いて基本的なプログラムが記述可能なことなどを示した[1]。さらに,この実数の表現を一般の有限次元距離空間上に拡張できること,その際,マシンが追加的に持つ必要のあるヘッドの個数と空間の位相的次元が一致することを示した[2],このことは,空間の次元という純粋に数学的な概念が,計算機構を通じても定義できることを示しており,興味深い。この表現を通じて,実数など連続体の性質について計算概念を通した研究の道が開けるのではないかと期待している。さらに,IM2-machineでの計算の記述可能性が,並列プログラミング言語GHC(Guarded Horn Clauses)におけるプログラムの表現可能性と一致することを示した[3]。前者の持つ不定元の扱いや不決定性が,後者の持つ論理型言語的な変数の扱いや,Committed choiceに基づく非決定性とうまく対応している。GHCという並列プロセスの記述を目的として日本の国家プロジェクトとして10年前に研究されてきた言語が,実数計算という,全く異なる分野で適用可能となったことは,たいへん興味深い。
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