本研究では、マルチスレッド方式においてマクロデータ値予測と呼ぶ新しい技術を開発し、次世代の高性能コンピュータアーキテクチャの要素技術としての有効性および実現可能性を検討・評価した。 まず、線形リスト構造や木構造などのデータ構造を扱うプログラムは、非数値計算系のプログラムを高速化する上で重要であるにも関わらず、その論理的な性質上の問題からこれまでは並列処理の対象とはなり得なかったのに対して、本研究ではポインタの参照関係を予測することにより、連結リストを用いたループを並列実行可能とする方式の提案と評価を行った。 次に、この並列実行方式を拡張し、プログラム中の論理的なひとまとまりの処理に対してデータ値予測を行うマクロデータ値予測手法を新たに開発・提案し、その有効性および実現可能性を検証した。その結果、本方式が一般的なタイプのループに対して広く適用可能であり、従来よりも少ないハードウェア量(予測機構における制御回路および予測テーブルのエントリ数)でプログラム実行を高速化できることが判明した。 さらに、本方式の適用可能性と性能における有効性を、予測技術の観点からではなく、命令セットの観点から整理しなおすことで、命令セットに追加すべき数種のマシン命令の検討を行った。これにより、動的な予測を行わずに定型処理として高速化が可能となり、従って、より少ないハードウェア量で、予測を行った場合と同等の性能が得られることが判明した。
|