分散共有メモリ環境において故障耐性を考慮した効率のよい分散アルゴリズムの設計に関して研究を行った。メッセージパッシングシステム上に分散共有メモリ環境を実現する問題、隣接プロセスと共有メモリを介して通信するレジスタ通信モデル上での耐故障アルゴリズムの設計、アドホックネットワークにおけるクラスタ構成法等に取り組んだ。 メッセージパッシングシステム上に分散共有メモリ環境を実現する問題に関しては、read/writeメモリと呼ぶ共有メモリを実現するアルゴリズムを提案した。実現アルゴリズムは、他のプロセスの動作に関わらず、あらかじめ決められたステップ数以内で動作を完了するという無待機性を有している。無待機アルゴリズムは、n個のプロセスのうち、n-1個が故障しても、正常プロセスは処理を完了することができるという高度な故障耐性を持つ性質である。メッセージ送受信の同期性や放送プロトコルの信頼性に関する仮定が異なるいくつかのメッセージパッシングシステムモデルに対して、効率のよい無待機なread/writeメモリ実現アルゴリズムを提案した。 隣接プロセスと共有メモリを介して通信するレジスタ通信モデル上での耐故障アルゴリズムに関しては、永久故障である停止故障に対する故障耐性と自己安定性と呼ぶ一時故障に対する故障耐性を同時に有するプロトコルに関して研究を行った。例題として、リーダー選択問題を一般化したx-グループ合意問題を取り上げ、故障検出機構を利用したx-グループ合意問題を解くプロトコルに関して、故障検出機構の能力と自己安定性かつ停止故障耐性に関する必要十分条件を導いた。また、複数のプロセスの動作に関する同期性に関する仮定が異なるいくつかのシステムに対して、効率のよいx-グループ合意プロトコルを提案した。 また、分散共有メモリ環境の拡張として、周波数を共有するアドホックネットワークに関するクラスタ構成法に関して研究を行った。故障やホストの移動などによるネットワークの形状変化に柔軟に対処する効率のよいクラスタ構成法を提案した。
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