研究概要 |
並列化困難と思われているP完全問題の並列性について,本年度は以下の様な成果を得た. (1)P完全問題の並列性を検証する指標の提案と,シミュレータの開発 P完全問題の並列性を検証するため,従来普及しているPRAMモデルに基づき,P完全性をあらわす指標の提案を行なった.次に,その指標を用いることにより,辞書式順極大3和問題,キューを用いた幅優先探索,凸層問題,可視層問題といったP完全問題について,それら問題の持つ並列性を表現できることを理論的に証明した.また,その並列性を表す指標を元にした並列計算モデルのシミュレータを設計し,現在Windows上で動作するアプリケーションとして製作を行っている. (2)P完全問題に対するコスト最適な並列アルゴリズムの提案 (1)にて提案を行った並列性を示す指標を用いて,上記に示したP完全問題について漸近的に効率のよい並列アルゴリズムの提案を行った.これらのアルゴリズムは,時間計算量と使用プロセッサ数の積が逐次処理の時間計算量と等しいコスト最適なアルゴリズムとなっており,これらのP完全問題については理論的に最適な並列アルゴリズムが存在することを証明した.また,これらのアルゴリズムを複数台のPCを用いたクラスタ並列処理環境に実装し,アルゴリズムの実用的な高速化を計測する実験を行った.実験より,実用的にもクラスタ並列処理においてこれらのアルゴリズムが効率よく実行できることを示した.
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