平成12年度の研究計画で解こうとした最小ダブルパス被覆問題は残念ながら米国の名門John Hopkins大学のRao Kosaraju教授により先に解かれてしまった。そこで急遽平成13年度で研究予定の問題の一部に切り替えた。 まず、マップグラフ上の最大点独立集合問題の効率的な近似アルゴリズムを四つ設計できた。一つ目のアルゴリズムはマップグラフと一緒にマップも与えられたとき、重みが最大点独立集合の重みのいくらでも大きい小数倍であるような点独立集合を二次時間内に求めてくれる。二つ目のアルゴリズムは重み無しのマップグラフのみが与えられたとき、サイズが最大点独立集合のサイズのいくらでも大きい小数倍であるような点独立集合を線形時間内に求めてくれる。このアルゴリズムの設計のために、k-マップグラフのいくつかの基本的な性質を明らかにした。これらの性質は他の問題(たとえば、最小点被覆問題)の解決にも応用できる。三つ目のアルゴリズムは重み無しのマップグラフのみが与えられたとき、サイズが最大点独立集合のサイズの四分の一以上の点独立集合を六次時間内に求めてくれる。四つ目のアルゴリズムはマップグラフのみが与えられたとき、重みが最大点独立集合の重みの対数分の一以上の点独立集合を七次時間内に求めてくれる。これらの成果を国際会議Cocoon2000で発表した。 次に、重み付きグラフの最大マッチング問題について研究を行った。この問題を解く多項式時間アルゴリズムが20年前から知られていたが、この問題の実用性から見てこの多項式時間アルゴリズムが効率的であるとは言えない。そこで、近似、並列化、randomizationという三つのアプローチを使って、最大マッチング問題を解く高速な確率的並列近似アルゴリズムを設計した。このアルゴリズムは重み付きグラフが与えられたとき、多項式個のプロセッサを使い、重みが最大マッチングの重みのいくらでも大きい小数倍であるようなマッチングを二次対数時間内に求めてくれる。この成果を国際会議IFIP-TCS2000で発表した。
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