研究概要 |
今年度,研究代表者は本研究課題に取り組むべく,バイナリー二次計画問題(Unconstrained Binary Quadratic Programming Problem,BQP)に対して様々なヒューリスティックアルゴリズムの開発を行った.以下,その開発済みのアルゴリズムについて述べると共に,その性能,結果および明らかになった事項などを簡潔に示す. 1.ランダムk-opt局所探索法(ランダムk-opt法) BQPに対するMerzらのk-opt法(従来法)は,deterministicであるため,与えられた初期解に強く依存する局所最適解を算出する.新たに開発したランダムk-opt法は,従来法よりも平均的に良好な局所最適解を算出可能であることが明らかになった. 2.アニーリング法 新たに開発したアニーリング法は,巧妙な再加熱および近傍解のゲイン値を高速に計算可能なデータ構造を採用することで,大規模なBQPに対しても良好な結果を算出できることが明らかになった.なお,本アニーリング法を用いることにより,ORLIBで準備されている大規模なBQPの幾つかの問題例に対して新しい最良解が極めて短い計算時間で発見された. 3.遺伝的局所探索法 1.で示したランダムk-opt法を用いて新たに開発した遺伝的局所探索法(GLS)は,2.で示したアニーリング法よりもある程度計算時間を必要とするが,既知の最良解を頻繁に算出可能であることが明らかになった.更に本GLSでは,ランダムk-opt法の利用の他に,BQPの多くの問題例においてランダムk-opt法で算出される局所最適解が最適解に向かってクラスタとなり存在する「大谷構造」を有するという特徴から,突然変異内で実施するパラメータ値の設定を行っている.この設定によって与えられる解を用いることによって,より良好な結果を平均的に算出可能であり,現在のところ,本GLSはBQPに対するヒューリスティック解法の中では最も強力な解法とされている. 来年度に向け,平均的により良好な結果を算出可能な反復局所探索法(Iterated Local Search,ILS)を開発中である.
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